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 報  告

 第24回ダイヤモンドシンポジウム 

 

第24回ダイヤモンドシンポジウムは,平成22年11月17日〜19日の3日間にわたって,東京工業大学大岡山キャンパスで開催された.初日に大学の消防訓練があったりして円滑に実施できるか心配があったが,ご参加の方々のご理解があったことで無事に会期を終えることができた.講演件数は,特別講演1件,口頭発表41件,ポスター発表81件の合計123件であり,参加者は招待者を含めて218名と盛況であった(図1).懇親会参加者も92名を数え,岡崎健東京工業大学工学系長と昨秋に瑞寶小綬章を叙勲なさった佐藤洋一郎先生のお話を興味深く聴いた後に,なぜか大岡山に出現した越後の銘酒達の香味に心を遊ばせる光景が和やかに映った(図2).シンポジウム3日目は,DLC標準化のワークショップが並行セッションで走り,こちらも50名を超える参加者で満員となった.

特別講演は,前東北大学教授,青山学院大学教授の河野省三先生に「CVDダイヤモンドの電子分光研究の10年」と題してCVDダイヤモンド表面のマイクロ電子ビームによる局所表面分析からヘテロエピタキシャルダイヤモンドの光電子回折法による分析,表面伝導層のエネルギーバンドダイヤグラムの研究まで,先生の歩まれた高度分析とCVDダイヤモンド合成の融合研究についてお話いただいた.河野先生のオリジナリティーみなぎるご講演に会場から賞賛と拍手が巻き起こった.

さて,恒例のポスターセッション賞受賞者には以下の3名が選ばれた(図3).内容の詳細は後述する.お三方の発表はもちろんみごとであったが,惜しくも選に漏れた発表の中にも素晴らしいダイヤモンドの原石が多々見られたことは本シンポジウムの質の高さを明示しており,まことに嬉しいことである.

最優秀賞 NTT物性科学基礎研究所 平間 一行

「単結晶n型AIN/p型ダイヤモンドヘテロ接合ダイオード」

優秀賞 九州大学大学院 大曲 新矢

「p型超ナノ微結晶ダイヤモンド・水素化アモルファスカーボン/n型Siヘテロ接合の紫外線受光」

優秀賞 日本工業大学大学院 鈴木 航

「押込み試験機によるボロンドープダイヤモンド膜の付着力評価」

今回のダイヤモンドシンポジウムでは,平成22年4月3日にご逝去になった杉野隆先生のご研究を振り返るとともに,瑞寶小綬章ご叙勲を讃える展示を行った.杉野先生御奥様と阪大の木村千春助教にご用意いただいたポスターと額を飾らせていただき,多くの方が杉野先生を偲びつつ展示に見入っていた(図4).

以下にシンポジウムの内容について報告する.今回は各セッションの座長に執筆をお願いした.

大竹 尚登(東工大)

スペース

 

河野先生の特別講演

図1 河野先生の特別講演

懇親会の風景

図2 懇親会の風景

ポスターセッション賞受賞者の3名

図3 ポスターセッション賞受賞者の3名

故杉野隆先生の展示

図4 故杉野隆先生の展示

 

第1日目のオーラルセッション[1]では主にDLCに関わる研究として,6件の発表があった.まず,東京電機大の大越から,最適なDLCの成膜法をキーワードによって検索するシステムの構築に関する発表があった.さらに最適化によって,中間層などの提案も可能なシステムの完成が待たれる.弘前大の遲澤は原子状水素を照射してSi-DLCを成膜したときの膜の構造と特性について報告した.茨城大の尾関からは,中性子を用いた水素の定量に関して,ERDAと比較しても色のない定量が可能であることが報告された.また,兵庫県立大の神田はNEXAFSによるSi-DLCの構造分析に関し,Siの含有量によって四つのグループに分類できることの報告があった.東大の佐々木は再スパッタによるAl基板への高密着性のDLCの成膜法の提案,さらに,KASTの白倉からは,再利用可能なDLCについて,実際に味覚テストを行った結果について報告があった.

大花 継頼(産業技術総合研究所)

 

1日目のオーラルセッション[2]では,炭素系膜の成膜技術および膜の機械的評価に関する4件の講演が行われた.成膜技術については,非晶質炭素膜,ダイヤモンド核発生,ナノダイヤモンド膜と多岐にわたり,皮膜評価としてダイヤモンド膜の摩擦特性,と各講演とも興味深い内容であった.慶應大の登坂らは,大気圧プラズマによる非晶質炭素膜合成について,成膜条件を展開することで硬さなどの皮膜特性を調整することが可能であることを報告し,研究結果をもとに大面積PET上への成膜技術に応用した結果についても示した.電通大の一色らは,モノメチルシラン(MMSi)の微量添加がダイヤモンド核発生に及ぼす影響について,MMSiを添加した際の挙動について報告し,核発生が困難な基板でもMMSi添加により核発生できることを示した.産総研の津川らは,表面波プラズマを用いた成膜方法により,鉄系基板へのナノ結晶ダイヤモンドの成膜が可能であることを報告し,成膜メカニズムについても示した.東北大の筒井らは,研磨ダイヤモンド膜の摩擦しゅう動挙動について調査を行い,高速しゅう動時に摩擦係数が低下する現象が見られることを報告し,シミュレーション結果と併せ,気体の流れによって生じる揚力により摩擦係数が低下することを示した.

高岡 秀充(三菱マテリアル)

 

さて,今回は新たな取組みとして,二つの特別セッションが設けられ,その一つとして「結晶の欠陥制御」がトピックスとして取り上げられた.

基調講演として,筑波大学の磯谷順一教授らが,ダイヤモンド単結晶中のNVセンタ制御について総括的な講演を行った.NVセンタは単一欠陥として光,磁気応答によるその状態制御が可能であり,量子情報処理や高感度磁束計への応用研究が進められている.講演ではNVセンタの導入法と,その応用上必要なダイヤモンド結晶母体への要求(窒素不純物,炭素同位体濃度)などについて紹介された.引き続き,筑波大の水落らはやはりダイヤモンド中のNVセンタの制御とデバイス応用研究について,自ら立ち上げたNVセンタの観測装置やドイツのグループとの共同研究成果などを紹介した.

セッション後半はCVDダイヤモンド薄膜中の欠陥評価について,産総研から2件の報告があった.加藤らは,X線トポグラフィ,偏光顕微鏡およびカソードルミネセンスを駆使して薄膜中の転位欠陥の評価・分類を行い,転位の起源や性状について議論した.梅沢は,ダイヤモンドのパワーデバイス応用の観点から,ホモエピタキシャル成長薄膜内の欠陥とデバイス特性との相関を明示し,特性の劣化の要因となる深いエッチピットの存在や,特性改善のための方策などについて議論した.セッションでは会場からの質問も活発であり,今後のさらなる展開に向けた問題意識の共通化などにおいて,意義があったものと考えられる.

谷口  尚(物質・材料研究機構)

 

オーラルセッション[3]では,CN,BNに関する3件の発表がなされた.窒化物の反応と物性を扱う本領域の特色の出た,高いレベルの発表と議論が展開された.長岡技大,兵庫県立大グループの「He,Ne,ArのECRプラズマを用いて作成したa-CNx薄膜の局所構造解析」では,NEXAFSを中心に新規の結果が示され,プラズマ状態が膜構造と組成に強い影響を与えるとの指摘がなされた.NTT物性研による「サファイヤ基板上SiドープBNのMOVPE成長」では,MFE法により高配向hBN薄膜が得られ,半導体特性を示すSiドープ薄膜の実現が発表された.移動度やドープ密度に関する質問がなされ,今後の特性向上への期待が感じられる好発表となった.物材研,京大,東大グループの「高圧合成法による立方晶窒化ホウ素単結晶中の不純物制御」では,高圧合成において希土類元素(Ce)の添加が実現されたことがSIMS,STEM像などにより示された.CeのN置換が近接のB空孔とともに生じる新規モデルが示されたことは特筆に価する.

野瀬 健二(東京大学)

 

オーラルセッション[4]では,カーボンナノチューブ(CNT)に関して4件の報告があった.早大・本田技研の落合らは,メタンと二酸化炭素を反応ガスとする先端放電プラズマCVD法で,結晶性の高い単層CNTを合成できることを報告した.本手法は環境対応型の合成法としても注目される.早大の大原らは,シリコン貫通電極内の導電体としての単層CNTの合成について,あらかじめ触媒を堆積させた基板と貫通した微細孔をもつ基板を別々に作製し,重ね合わせることで超微細径ビアからのCNT合成に成功したことを報告した.滋賀医科大の小松らは,ジポルフィン化合物をピンセットとして特定の構造をもつCNTを分取するユニークな技術を用いて,単層CNTの単一光学異性体の純度を高めることに成功したことを報告した.産総研の山本は,電子線エネルギー損失分光法で得られるスペクトルから任意のエネルギー損失電子のみで結像できるエネルギーフィルタ透過型電子顕微鏡を紹介した.カーボンナノ材料への適用事例と得られるデータの有用性が報告された.

葛巻  徹(東海大学)

 

特別セッション「グラフェン」では,はじめに斎藤晋東京工業大学教授による基調講演が行われた.これまでのグラフェン研究を概観していただいた後,グラフェンに周期的にナノチューブ構造を周期的に導入することによる電子構造制御についてお話しいただいた.グラフェン修飾系の多くは直接遷移半導体であることが紹介された.産総研の石原らは熱CVD法によるCu(111)単結晶表面を用いた大面積グラフェン合成について報告した.10mm×10mmにわたる1層から数層のグラフェン膜形成が紹介された.産総研の金らはマイクロ波励起プラズマCVDによる大面積グラフェン膜の低温合成について発表した.A4サイズの一様なグラフェン膜を合成し,同膜を用いたタッチパネルを製作した.中部大の梅野らはCVDによる大面積グラフェン膜の合成と透明電極応用について報告した.原料として天然素材であるショウノウを用いた.物材機構の渡邊らは伝送線路(TLM)法による多端子グラフェンデバイスのコンタクト抵抗評価を発表した.グラフェンと金属電極とのコンタクト抵抗は電極金属の仕事関数にはよらないことが報告された.

岡崎 俊也(産業技術総合研究所)

 

オーラルセッション[5]ではダイヤモンドの半導体素子応用に関する5件の発表があった.東芝の鈴木らは縦型SBDの60Co-γ線耐性について報告し,100kGy照射では劣化がないが,300kGyでは電極金属の相互拡散により不良が発生することが示された.九大の大曲らはSBD漏れ電流と,CL法によるBandA発光マップとの相関を報告し,良・不良素子のどちらにもBand A発光が見られるものの,特定の欠陥で漏れ電流が発生している可能性を示唆した.物材機構の寺地らは縦型SBDの詳細な評価でTFEによる漏れ電流モデルを示し,電極界面での低障壁パッチと電界集中が漏れ電流を決定するモデルを唱えた.阪大の舟木らは縦型SBDのスイッチング回路への組込み評価で,市販SiC素子と比較しても低損失性とスイッチング速度でダイヤ素子が上回る可能性を示した.産総研の竹内らは,接合ダイオードにおける電子放出特性において,高品質i層を用いることで,nip,pin何れの構造でも高い電子放出電流が得られることを示した.

梅沢  仁(産業技術総合研究所)

 

オーラルセッション[6]でNTTの嘉数らは,ダイヤモンド表面伝導層の起源をより詳細に調べ,NO,オゾン,SO2といったガスがp形表面伝導層の形成に寄与していることを示した.これらのガスが表面伝導層の発現にどのように寄与しているのか明確ではないが,表面伝導層の安定形成のうえで重要な知見といえる.

NIMSのLiaoらは,圧力センサ応用を目的に,PZT/ダイヤモンド積層構造を作製した.PZTをダイヤモンド上に蒸着する場合,良好な配向性とヒステリシス特性を得るうえで,CaF2をこれらの層の間に挟み込むことが鍵であると述べた.

NTTの平間らは,AlGaN/GaNヘテロ構造をダイヤモンド上に作製することで,高出力動作時の特性向上を試みた.ヘテロ構造をダイヤモンド上につくる場合,AlNバッファ層,およびGaN/Al多層膜を挟むことが,クラックフリー二次元ガス形成層の作製に不可欠であることを述べた.早大の鹿又らは高濃度ボロンドープ層を低濃度層で挟んだSNS接合を作製した.現時点ではN層のホウ素濃度が1020cm-3程度と高く,急峻な界面の形成が今後の課題となろう.

寺地 徳之(物質・材料研究機構)

 

オーラルセッション[7]で東理大の近藤らは,Ar気流下および空気中においてホウ素ドープダイヤモンド(BDD)薄膜を二段階熱処理することにより,一段階目で表面グラファイト化が起こり,さらに二段階目でBDD表面をサブミクロンサイズで多孔質化することに成功した.比表面積を大きくすることにより,高性能BDD電極への応用が期待される.九工大の瀬之口らは水素化ダイヤモンド粉末とジアゾニウム塩の熱反応により,ダイヤモンド粉末表面上にニトロフェニル基を化学的に導入できることを報告した.ニトロ基についてはさらにアミノ基へ変換することが可能である.早大の小林らはカルボキシル基終端ダイヤモンド薄膜を用い,アプタマーによる血小板由来成長因子(PDGF)検出について報告した.洗浄液中のMgCl2濃度に依存して,高コントラストでのPDGF検出に成功した.

中村 挙子(産業技術総合研究所)

 

最終セッション[8]では,3件の報告があった.早大の井堀らは,相補鎖・1塩基変異鎖・非相補鎖の異なるプローブDNAで修飾した3種類のFETを,同一基板上に一次元配列したSGFETアレーを作製し,ターゲットDNAを選択的に検出できることを報告した.産総研の中村らは,ドライプロセスを用いたカーボン膜のフッ素官能基による表面修飾を報告した.合成したペルフルオロアゾオクタンの気体と接触させた状態で膜表面に紫外光を照射することにより,効果的にDLCおよびダイヤモンド表面をフッ素官能基で修飾できることを示した.修飾表面は撥水・撥油性を示すことが報告された.慶應大の吉本らは,フッ素添加非晶質炭素(a-C:H:F)薄膜で被覆した抗血栓性ステントについて報告した.ステント基材であるステンレスと接触するSiC層と最表面のa-C:H:F層との間にa-C:H:Si層を導入することで,ステント拡張時のはく離を抑制できることが報告された.また,動物実験により,a-C:H:F被覆ステントが,有意な狭窄抑制効果をもつことが示された.

近藤 剛史(東京理科大学)

 

ポスター発表は全部で81件あり,ポスター部門賞に前述の3件の発表が選ばれた.最優秀賞に選ばれたNTTの平間らは,SiドープAlNをダイヤモンド上に形成してホール効果を測定し,AlNがn形の特性を有することを示し,同n-AlN上にp形ボロンドープダイヤモンド膜を形成し,その電気特性を測定した結果を示した.作製した積層素子は明確な整流性を示し,電流注入発光スペクトルから電子がAlNからダイヤモンド側へ注入されていることを見いだした.優秀賞に選ばれた日工大の鈴木らは超硬合金上にダイヤモンドを形成した試料に対し,ダイヤモンド圧子を用いた押込み試験を行い,基板変形領域まで到達させることで膜と基板の密着性を評価するという新しい手法の提案であった.押込み時にアコースティックエミッションを同時測定することで膜が基材からはがれる瞬間を正確に捉えられることが示された.ダイヤモンドでダイヤモンドを破壊試験することから5回程度で圧子も破損するが膜による差異がはっきりと捉えられる利点も報告された.もう1件の優秀賞に選ばれた九大の大曲らは関連するもう1件と合わせてボロンドープ超ナノ微結晶ダイヤモンド(UNCD)に関する報告を行った.一つはBドープその構造解析で,他方はアモルファス炭素とUNCDの混相膜とn-Si基板で形成されたデバイスの光起電力特性に関する報告であった.254nmの光照射時に作製したデバイスの光起電力が観測され,抵抗温度測定などからも混相膜が半導体として機能していることが示された.

受賞した講演以外にも多くの興味深いポスター発表があった.評価手法に関する報告も多く見られた.石川県工試の鷹合らは中性子線とX線を用いた反射率測定の結果からフィルタードアークイオンプレーティング法で作製したDLC膜の真密度を算出した結果を比較した.X線では1.9および3.0g/cm3とされた真密度は中性子線では2.0および3.2g/cm3と見積もられた.両者の違いは小さいが全反射角の鮮明性から中性子線を用いて測定したほうが確度が高いことも報告された.一方,東海大の石山らはナノ材料の引張試験をするためのマニュピュレータを試作し,SEM中で基板から単離させたDLC膜の引張試験を行った結果を報告した.引張強度は420MPaであったが,もともとDLC膜に存在した亀裂からの破断進展で,正確な膜強度とはいえないとしながらも非常に新しい手法であり,今後の展開が期待される.

機能性付与のための炭素系コンポジット材料の研究報告もあった.日工大の上野らは光触媒能をDLC膜に付与するためにICPプラズマCVD法を用いてトルエンとTiO2ナノ粒子混合液からTiO2含有DLC膜を作製し,その特性について報告した.メチレンブルーの脱色試験の結果,光照射により反応が示され,水滴接触角も光照射により,80°から55°へ親水化することを示した.また,東工大の中川らはφ110nmの炭化タングステン粉末にφ5nmカーボンオニオンを混合し,通電加熱により焼結体を作製しその断面形状観察結果と機械特性について報告した.カーボンオニオンの添加により焼結体の相対密度は低下し,機械強度も低下するという報告がなされた.膜の報告が多い炭素構造体の中,先駆的で新鮮な報告であった.

ダイヤモンド膜の成長に関する発表ではAISTの山田らによりマイクロ波P-CVD法で作製した自立ダイヤモンド膜を種結晶として作製した大面積ダイヤモンドウェハに関する報告がなされた.ラマン分光測定の結果から分布はあるもののおおむねTb程度の結晶性が保持できることが示された.今後のダイヤモンド電子デバイスの工業化のための基礎技術となると考えられる.さらに電通大の関口らはステンレス基板上へのダイヤモンド形成を目的にステンレス表面のCrを窒化することでCrN層を形成し,その上にダイヤモンド膜を形成する試みを報告した.XPSの結果より表面へ窒素を用いたプラズマ処理により表面に窒素が導入されていることが示され,その後,メタンと水素を導入し,膜を作製したところ,ラマン分光分析の結果よりアモルファス炭素とダイヤモンドが形成されていることが示された.また,同グループは超硬合金表面をシリサイド化し,その上にダイヤモンド膜を形成する手法についても報告した.

電子材料向けダイヤモンドの研究関連ではAISTの渡邊らにより12Cと同位体13Cで作製したダイヤモンドを交互に30nmに交互に積層した超格子素子のカソードルミネセンス測定の結果を示した.同位体の導入によりバンドギャップが非常に小さい領域でステップ状に変化したことから発生するキャリヤが比較的温度の高い領域でも閉じ込めることができると報告された.

ダイヤモンド電極の液中適用に関する研究も多く報告され,慶應大の渡辺はsp2成分を多く含むボロンドープダイヤモンドの硫酸溶液中でのC-V測定からボロン濃度が高いほど得られるC-Vカーブの電位窓が狭くなり,バックグラウンド電流も大きくなると報告した.グラッシーカーボンに比べて高電流密度での駆動時の耐久性が高いことも示された.一方,東理大の近藤らのグループはボロンドープダイヤモンド電極表面にコバルトフタロシアニンやCoおよびFeフェニルポルフィリンなどを付与し,選択的化学活性を付与し,作製した電極の電気化学性能について報告した.これら官能基導入には紫外線照射を用いた付加手法が用いられ,ダイヤモンド電極の適用範囲拡大のための種々の官能基付加が期待できる.

BN関連の研究ではNIMSの日浦らにより六方晶窒化ホウ素(hBN)単結晶から粘着テープを用いて機械的に取得した薄膜の光学特性について報告がなされた.数層のhBNの光学特性から取得した層が多重反射・多層モデルでの解析結果とよく一致することを示した.2010年のノーベル賞を受賞した技術と同様の簡便な技術で取得できることから,本技術により今後のhBNの研究が加速されることが期待できる.

最も実用に近い研究例として実機をもち込んだデモンストレーションをしている研究発表もあった.高知FELの大岡らはナノダイヤモンドエミッタを用いた電界放出ランプを用いた白色植物育成用ランプを試作し,トウガラシの育成に与える影響を調査した結果を報告した.植物への有効波長の影響からLEDや蛍光灯より成長促進効果があることが報告された.本発表では実際に発光している様子を観察することができた.

赤坂 大樹(長岡技術科学大学)

 

以上のように,大変密度の高いシンポジウムを開催でき,フォーラム関係者に実行委員長として心から感謝する次第である.また平田敦准教授の獅子奮迅の働きなしには円滑な運営は望むべくもなかった.さらには毎晩大岡山での反省会にお付き合いいただいた皆様,ありがとうございました

大竹 尚登(東京工業大学)

 

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