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 報  告

 平成20年度・第14回技術調査講演会報告 

 

ニューダイヤモンドフォーラム技術調査委員会では,毎年1回技術調査講演会を開催しており,平成20年度はその第14回目の講演会として平成21年3月12日に産業技術総合研究所臨海副都心センターにて開催した.

講演内容は,平成19年度に経済産業省からJFCAを通しての委託された調査研究「ダイヤモンド及びダイヤモンドライクカーボン技術ふかん図調査研究」の報告書についての講演であった.本委託研究は,経済産業省ファインセラミックス室からの12年ぶりの産業技術調査研究であり,この10年間のダイヤモンドおよびダイヤモンドライクカーボンの実用化状況のまとめと,将来展開への課題を抽出したものであり,ニューダイヤモンドフォーラムが総力をあげて取り組んだものである.

本調査研究は,製造技術WG,エレクトロニクス応用WG,機械・光学応用WG,バイオ・化学応用WGの四つのワーキンググループに分かれて調査が行われ,それぞれのWGの主査を務められた茶谷原昭義先生(産総研),鹿田真一先生(産総研),大竹尚登先生(名古屋大,現東工大),栄長泰明先生(慶應大)と,全体を取りまとめられた藤森直治委員長(産総研)からの5件の講演があった.

製造技術に関しては,まずダイヤモンドの合成手法について,超高圧法,気相法,衝撃法,爆轟法や水熱合成法等についてその手法と装置について詳細な報告があった.次にDLCの成膜方法について,プラズマCVDや熱CVDなどのCVD法,スパッタリング,アーク法,イオンビーム法などのPVD法について述べられた.また,加工法については,切断技術,研磨技術,メタライズ技術,微細加工技術について,特に微細加工については,イオンビーム加工,プラズマエッチング加工,熱化学加工,モールド転写法が用いられているとの報告があった.

エレクトロニクス応用に関しては,まずダイヤモンドの優れた物性(熱伝導率,弾性率,絶縁破壊電界,耐熱性,耐放射線性)について述べられた後,それらの物性の応用デバイスとして,ヒートスプレッダ(ヒートシンク),表面弾性波デバイス,光デバイス,電子源,パワースイッチングデバイス,高周波デバイス,MEMSデバイス,耐放射線・耐環境デバイスなどについて報告があった.ダイヤモンドデバイスの実用化という面では,これまで表面弾性波デバイスが一部実用化し通信インフラに使用されているほか,ダイヤモンド電子源が有力な電子線源として今まさしくテイクオフしようとしており,また高温動作と熱伝導特性を利用した冷却系フリーパワーデバイスや省エネ型高度情報機器,高度交通システムへの応用が期待される高周波やMEMSデバイス,原子力発電用センサ用としての耐放射線・耐環境デバイスなどが期待されている.

機械応用分野に関しては,ダイヤモンド系材料の機械応用および光学応用の現状と将来分析が行われた.まずダイヤモンド工具として,単結晶工具,ダイヤモンド焼結体(PCD)工具,コーティング切削工具,研削工具,耐摩工具,ナノダイヤモンド工具について,それぞれ詳細な報告があった.次にDLCについて,耐摩耗材,低摩擦材,焼付き防止等,DLCコーテッド切削工具などの工具への適用例が報告された.特にDLC膜は,機械部品の中でも最も使い方が厳しく,信頼性が求められる自動車用途への適用が急拡大しているが,耐摩耗性と摩擦係数のさらなる両立という高性能化が要求されていることが述べられた.

バイオ・化学応用分野に関しては,ホウ素を高濃度にドープした金属様導電性をもつダイヤモンドを化学電極として利用する動向と,DLCの生体適合性を利用したバイオ,医療への応用展開についての報告があった.前者のダイヤモンドの化学電極としての利用は,新たな応用を目指しての研究開発が盛んになってきており,これに関連する学術論文数も急激に増加している.また,学術的展開だけでなく,ダイヤモンド電極を用いたオゾン発生装置,フッ素発生装置,電気化学センサの試作品が作製されるなど実用化も近づいてきており,将来性という点で大きな展開が期待できそうだと考えられている.一方,後者のDLCのバイオ,医療への応用展開については,DLCをカテーテルやステントに応用して抗血栓性を実現することや,歯科インプラント工具へ応用することなど,さまざまな例が報告されている.また,ガスバリヤ特性の向上を目的としたDLC薄膜の食品包装容器への応用は,ここ10年で大きな発展を遂げていることが述べられた.

最後に藤森委員長からまとめの講演があった.その内容は

1.ダイヤモンドやDLCは,この10年間で非常に多様な応用が実現し,製造技術も格段の進歩をした.すでに部品や工具として重要な位置付けを担っており,今後も一層の市場拡大が見込まれる.

2.国の重要技術課題へ対応する材料として,ダイヤモンドやDLCは重要な位置にある.利用範囲が広く,応用分野ごとの課題への対応が必要.

3.各国は活発な研究開発を行っている.日本が優位な状況には変化はないが,必ずしも全般でリードしているわけではない.活性化へ向けた施策が望まれる.

4.素材売りやコーティングサービスの広がりに対応し,規格の制定へ向けた前進が必要.特にDLCのJISやISO制定に向けた施策は重要.

最後に,「材料の最後のフロンティアを切り拓く担い手として,ニューダイヤモンドフォーラムでの活発な交流が期待される」と述べられ,講演会は終了した.

林 秀樹(住友電気工業)

 

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