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 報  告

 平成29年度第3回研究会 

 

平成30年3月2日(金),ニューダイヤモンドフォーラム平成30年度第3回研究会が東京工業大学大岡山キャンパス石川台3号館にて開催された.今回のテーマは「研削によるナノ精度加工の最前線」であった.この分野で活躍されている4名の講師により話題提供がなされた研究会の内容を以下にまとめる.

まず,(株)アライドマテリアルの石津智広氏より,「次世代半導体の高能率ダメージレス研削」との題目で,SiC,GaN,LiTaO3などの難削材料の仕上げ加工のための高研削ホイールの選定や研削事例について話題提供がなされた.これら材料はぜい性材料であるため,加工ダメージによるウェーハ破損が発生しやすく,研削の高能率化との両立が難しい.この問題を解決すべく,砥粒の分散性や結合力,保持力に着目し,被削材の材料特性とこれらパラメータの適切な組合せによる研削ホイール設計指針についての紹介がなされた.SiCやGaN基板の研削では,毎時1μm程度の研磨レートであるラップ加工に対し,表面粗さなどの加工面品位を維持しつつ,加工時間1分で取りしろ10μm以上の大幅な高能率化を達成した.また,SAWフィルタとして使用されるLiTaO3基板はぜい弱な材料であり,性能向上のために薄厚化が求められているが,材料設計と研削点へのクーラント供給を最適化したホイールを使用することで,ウェーハ破損なく高能率で高加工面品位が得られる事例が示された.

次に富山県立大学の岩井 学氏より,「導電性ダイヤモンド素材の各種除去加工への応用」と題して,導電性ダイヤモンド砥粒,放電研削,これらを適用した砥石や加工事例など幅広い内容の話題提供がなされた.ボロンをドープしたダイヤモンドの高い耐酸化温度および低い比抵抗の特徴を生かし,放電加工用電極へ適用した事例では,銅電極では電極消耗が大きくなる加工条件において,導電性CVDダイヤモンド電極では消耗はほぼ見られないことなどの紹介があった.また,砥石への適用では,放電によるツルーイングやドレッシングによりダイヤモンド砥粒の均一性を実現できることで,超硬合金の鏡面加工を可能とした.さらに,多結晶ダイヤモンド焼結体(PCD)工具についても紹介があり,放電ツルーイングされたPCD工具を電極として超硬合金を放電加工し,その後に同一工具で研削することで微細溝加工を実現できる事例が示された.導電性ボロンドープダイヤモンドの特性を活用することで,精密加工用工具など種々の分野への適用の可能性が感じられた.

後半の部では,東芝機械(株)の福田将彦氏から「超精密加工機と加工事例」の題目で,加工機の観点からのアプローチで超精密加工に関する話題提供がなされた.超精密加工機は,非球面レンズおよびレンズ用金型の加工などを主な目的に広く用いられている.量産小型レンズユニット向けにはプラスチックレンズが採用されている一方で,光学特性や耐環境性の観点からは,ガラスレンズが必要不可欠になっており,さらに加工難易度が高い大口径,非球面量の大きいレンズへの要求が高まりつつあるなど,最近の動向の紹介の後,超精密加工機に求められる各要素,加工技術についての解説がなされた.ナノ精度加工を達成するため,超精密加工機の各部材の高剛性化とともにリニアモータ駆動系,振動に対し安定な制御系を構築し,加工点の0.5nmステップ動作応答を確認しているとのことであった.さらには,非球面形状の研削加工の場合,回転軸を含む複数の軸の高い同期性とともに,0.01min−1の分解能でスピンドル回転数制御を行うことで,ワークの加工位置に影響しない加工ができることの紹介がなされた.

最後の講演として,理化学研究所の大森 整氏から,「ELID鏡面研削におけるナノダイヤモンドの効果」との題目で,ELID研削の原理および加工事例についての話題提供がなされた.同氏により発明されたELID研削法は,良好な砥石切れ味の確保とともに,微細砥粒を効果的に利用できることから,さまざまな分野の材料の加工に適用されている.近年のサファイアや低熱膨張ガラスなどの難削材の仕上げ加工の効率化の要求に対し,ナノダイヤモンド(ND)添加の導電性砥石を用いたELID研削の適用について紹介がなされた.数vol%のNDをμmオーダの砥粒に添加した砥石を用いたサファイア,低熱膨張ガラスの研削事例では,より高精度な加工が可能になるとのことであり,測定の困難なNDの役割などの解明を含め,今後の展開が期待された.

講演後は,今回の研究会の出席者33名のうち,23名が懇親会に参加し,引き続き,講師や出席者との情報交換を行った.講演をいただきました講師の皆様に厚く御礼申し上げます.

宮下 庸介(三菱マテリアル)

平田  敦(東京工業大学)

 

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