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 セミナー報告

 平成21年度第1回セミナー 

 

セミナー講演風景

セミナー講演風景

 

平成21年度セミナーとして2009年12月3日にDLCの合成・評価の疑問に対し総合的に解決することを目的に「これでわかるDLCの合成・評価の実際」がナノテック株式会社本社(千葉県柏市)で開催された.

DLCを利用するユーザの方から,研究者の方々まで幅広い分野の方が参加され,4件の講演に加えてDLC合成の現場を見学し,さらに参加者自身で硬さや耐摩耗性測定の実技が行われた.

まずは,「DLCの特徴と分類」に関して長岡技術科学大学の斎藤秀俊先生のご講演があった.DLCに関する特許が2007年から急激に増えているなどの報告があり,今後分類や特許が登録されるためにも重要であるとのご講演があった.分類に関しては,DLC膜の密度に対する水素組成をプロットしたグラフにより五つのタイプの分類が示された.水素組成とsp2/sp3比によりタイプT,タイプUa,タイプUb,タイプVa,タイプVb,タイプWに分類される.今後は,新たな発明・特許が出願し登録されるためには,これら分類が認知され利用されることが重要であることが示された.次に,「DLCの合成と応用」に関して東京工業大学の大竹尚登先生のご講演があった.

試験室における実技

試験室における実技

工場見学の様子

工場見学の様子

特に,DLC合成はイオンプロセスであり,中性ラジカルプロセスであるダイヤモンドとは合成方法が大きく違うことが示された.また,準大気圧下での成膜実験結果が示され,イオンプロセスをどのように使いこなし,合成を行うかがDLC合成においては重要であると再認識した.今後のDLCの利用はCO2削減のためにも重要な技術であることもシミュレーション計算から示され,さらなる用途拡大にも期待ができると感じた.

次に「DLCの機械的特性とその評価法」に関して産業技術総合研究所の大花継頼先生のご講演があった.特に興味深かったのは,水中でのDLC摩擦摩耗現象メカニズム解明に関しての研究である.TOF-SIMSを用いた重水素中およびH218O中での摩擦摩耗痕の解析結果から,DLCと水とのトライボケミカル反応により親水性基が生成されていることを示す重要なデータが示された.

昼食後「ナノテックのDLC合成・評価技術」に関して筆者が発表した.当社のイオン化蒸着法とDLCから進化した高機能膜ICFに関してご紹介させていただいた.

その後,2班に分かれ,DLC合成の見学および現場での質疑応答とDLC評価の実技(ナノインデンタ,膜厚測定,常温摩擦摩耗試験など)が行われた.時間が足りずに全員が実技を行えなかったが,参加者の経験の一助になればと考えている.

最後の総合討論では,DLCの表面官能基の測定に関して表面波プラズモンを利用した興味深い測定データの説明が斎藤先生からあり,今後のDLCのさらなる開発の進展が期待される有意義な時間となった.

平塚 傑工(ナノテック)

 

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